「罪と罰」のあらまし

 能力ある者は、この世から除いてもよいような人間を殺してもかまわない、なる思想を持つラスコーリニコフは金貸しの老婆を殺す計画を立てる。良心がその企てを拒否することもあるが、偶然に老婆がただ一人でいる時間を知り、ナポレオン思想が彼の心内で勝ちを占め、殺人を犯す、それも想定外にも、老婆の妹をも殺めてしまう。

 犯行は誰の目にもとまらず、捜査を担当する予審判事ポルフィーリィの追求をもかわすことができた。

 酔いどれの九等官マルメラードフが馬車に轢かれて死ぬことに出遭い、一家に関わることになり、娼婦ソーニャと知り合う。妹ドゥーニャの結婚話、これはラスコーリニコフ一家の窮乏に因するものであるが、その相手のルージンと対立する。

 ラスコーリニコフを交えたドーニャとルージンとの話合いは決裂する。ドゥーニャのかっての家庭教師の雇い主のマルファから遺産があることが分かる。ドーニャとラスコーリニコフの友人ラズーミヒンが親しくなる。ラスコーリニコフは殺害した老婆の妹が所持していた聖書の「ラザロの復活」をソーニャに読むように言う。

 ラスコーリニコフはソーニャの純真さにうたれ、犯行を告白する。ソーニャはラスコーリニコフに大地に接吻して罪の許しを請えと言うが、彼はすぐにはそれを受け入れない。ソーニャは懲役にさえも一緒に行くと言うが、ラスコーリニコフはまだ受け入れる気は無いと告げる。その一部始終を物語の副主人公とも称されるスヴィドリガイロフに盗み聞きされる。スヴィドリガイロフはかってドーニャが家庭教師をしていた田舎の家の主人であって、ドーニャに恋心を抱き、それを遂げようと、ルージンとの結婚話を妨害するためサンクトペテルブルグに出て来た。

 予審判事ポルフィーリイがラスコーリニコフの部屋を訪ねてきて、自首を勧めるが、ラスコーリニコフは応じない。

 スヴィドリガイロフはラスコーリニコフのことを種に、ドーニャに自分の意に従うことを強いるが、彼女は拒絶する。後、スヴィドリガイロフは自殺する。

 母、ドゥーニャ、ソーニャの女性達の思いを受け、ラスコーリニコフは遂に自首することを決心する。 警察署に出向く際も逡巡するが、ソーニャの見守りもあって、自白をする。

 刑に服した後、ソーニャが従って来た流刑地のおいても、ラスコーリニコフは真の悔恨を感じず、ナポレオン主義に拘ったが、病を得、夢に見た自分のみの考えに固執する人々の社会の滅亡に心を動かされる。ソーニャと会合の際、二人の運命に変化に起こった。ラスコーリニコフの心に今までとは違った未来への希望が、ソーニャとともに生きる希望が宿った。刑期はまだ7年を残してはいたが。